Tableau

タイトルにある「KESHIKI」(けしき)とは、単に風景を指す言葉ではなく、陶磁器にみられる窯変による「景色」という言葉に由来します。日本では主に茶道の世界において、釉薬と焼成による頽れ・窯変・斑文など、器の表面の表情(景色)を読み取り、記憶の中にある風景や心情を重ねて鑑賞します。このような意図的には成し得ない不測の変化からなる表情を感覚的に捉え、自己の内面の感情へと結びつけ、そこに美しさや意味を見いだす姿勢は、日本人のもつ独特な美意識の一つと言えます。

シリーズ「KESHIKI」では、制作の過程において予期しない偶発的な変化や効果を積極的に取り込みながら作業を進めています。それは塗りや削りによってできる画面上の凹凸や、何度も重ねることで得られる絵の具のにじみやはがれであったり、時にはバーナーで画面に熱を加えた痕跡であったり—。こうした画面上の不測の変化によって無骨かつ繊細な色やマチエールが生まれ、それらが重なり合い、あるひとつの「景色」として独自の表情を持つ画面へと変化してゆきます。

茶碗の見所を鑑賞するように、これらの作品が観る人の記憶の中にある風景や心情、あるいは何かの情景を思い起こさせるきっかけとなればと思います。ぜひ器の景色を眺めるような感覚で鑑賞していただければ幸いです。

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